HIV/AIDS 服薬チェックシートの使い方
監修:国立病院機構 大阪医療センター 薬剤部 矢倉 裕輝 先生
質問票の記入について
質問表では、「生活全般について」、「他の病気・薬について」、「今の治療について」の3つのカテゴリーの質問によって、患者さんのライフスタイル上の課題や潜在ニーズを把握します。
質問票(記入例)
生活全般について
ライフスタイルの確認とともに、副作用発現の可能性とアドヒアランスの確認を行い、日常生活における服薬継続の阻害因子を探索しましょう。
例えば、「最近、入眠しにくい、もしくは途中で目が覚める。」で「はい」と答えている患者さんの場合では、睡眠障害はストレスと関連していることが多いことから、ストレスの項目のチェックとあわせて評価するとよいでしょう。
また、検査値に現れない薬剤性の自覚症状の可能性があります。
「近ごろ、太ったもしくはやせた」「このごろ、食べる量が増えた」「運動不足だと実感している」といった質問を追加いたしました。患者さんの最近の体重の変化や運動量などを把握することで、副作用の発現などのチェックに役立ちます。
他の病気・薬について
現在服薬している薬の他の病気への影響や、かくれた薬物相互作用の可能性に注意しましょう。
他の病院に通っていて薬が処方されており、それが抗HIV 薬と相互作用をきたすものかもしれません。サプリメント、健康食品と聞いてしまうと、患者さんによっては関係ないと判断される場合があります(例:プロテイン)。なるべく限定する表現を使わず、確認するとよいでしょう。
今の治療について
現在服薬している薬で課題や満たされていないニーズがないかを確認するとよいでしょう。
一見、順調に服薬を継続されていても、実は我慢して服薬していたり、服薬のためにあきらめていることがあるかもしれません。
副作用、薬の大きさ、1日の服薬回数、1回の服薬の錠剤数などの確認をすることで、現状の課題の解決やニーズを満たすことができる薬の紹介につながる可能性があります。
「決められたとおりに飲めなかったことがある」「今飲んでいる薬で改善して欲しいことがある」といった選択肢つきの質問を設けました。患者さんの具体的な状況を把握できると同時に、コミュニケーションのきっかけとしても有効です。
生活スケジュールの記入について
治療の継続のためには、患者さんのライフスタイル、生活リズムにあった服薬が重要です。
患者さんが記入した生活スケジュールをもとに、服薬に無理がないか、あるいは、服薬にあわせるために無理をした生活になっていないか、患者さんと話し合ってみましょう。
生活スケジュール(記入例)
- 可能であれば、医療者が問診を行いながら、記入していきましょう。
- 外側の円に普段の日、内側の円にそれ以外の日の生活スケジュールを記入することで、ライフスタイルが規則的か不規則かを確認できます。
- シフト制のお仕事などで3つ以上の生活パターンをお持ちの患者さんには、さらに外側に円を描いて記入しましょう。
- 周囲に人がいる状況で薬が飲めないという悩みもありますので、食事の時間は誰と過ごしているかも確認してみましょう。
- 代表的な1日の生活スケジュールを描けない患者さんは、うつなどの精神疾患を持っている可能性があります1。原因を考えて、医師を含む医療スタッフ間で対応を考えましょう。
1. Magidson JF, et al.: AIDS Behav. 2015; 19(1): 34.