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施設においてCOVID-19陽性者が発生した場合
特別養護老人ホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などの在宅系施設から依頼があれば往診し重症度を判断します。一方、介護老人保健施設では、施設長(医師)が重症度を判断し、当院へは薬剤投与のための往診を依頼します。これら施設の入居者は高齢で重症化リスクを併せ持つため、軽症であってもほとんどの症例が抗ウイルス薬投与の適応となります。日頃の療養状況、咽頭痛や意識レベルの変化などを確認して内服困難と判断した場合にはベクルリーを選択し、訪問看護師や施設の担当看護師へ点滴投与やその後の経過観察などを依頼します。訪問先では胸部X線などの検査が困難なため、投与3日目に症状をみて継続投与するかを判断しています。
在宅系施設は訪問看護師に『訪問看護指示書』を発行し、施設内での状態観察、身体介護、薬剤投与を依頼し、その状況の報告を受けています。
ベクルリーの投与を行う場合には連日の訪問が必要となるため、『特別訪問看護指示書』の発行が必要となります。内容は、患者さんの現病歴や合併症、COVID-19罹患に至った経緯、処方薬を記載し、実際のベクルリーの投与方法を記載します。
いずれの指示書にも主治医の連絡先を記入するため、状態の報告や問い合わせを随時行い、主治医がそれに応じた指示を出します。
施設でCOVID-19陽性者が発生した場合、薬剤の調製を行うには落ち着いた環境下ではないので、初回投与時のベクルリーの調剤は薬剤師が行っています。通常の環境整備のもと、作業台を清拭し、トレーに使用する薬剤と材料を全て準備します。手洗いと手袋装着後、手順に従ってベクルリーの調製を行います。薬剤への影響を最小限にするため、バイアルとシリンジ内のエアーをコントロールしながら充填します。充填後は、温度管理(20~25℃で24時間又は2~8℃で48時間)をしますが、特に夏は注意が必要だと思います。施設看護師が調製できる環境ができてから、業務を引き継ぐようにしています。
各種介護保険施設における診療報酬の算定方法は下記の通りです。
- 有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅での投与
1)往診料+初診料または再診料
2)緊急往診加算(初回のみ)
3)院内トリアージ実施料(特例)(感染対策に対する算定)
4)救急医療管理加算1(特例)
5)ベクルリー薬価+他の注射薬剤の薬価料金
6)点滴注射手技料(訪問看護指示書を発行し訪問看護師へ依頼する場合には算定なし) - 特別養護老人ホーム(当院が嘱託医)
1)算定なし
2),3),4),5) 算定あり
6)施設看護師が実施のため算定なし - 介護老人保健施設(施設医師より往診依頼(診療情報提供)を受ける)
1)算定なし
2),3),4)算定あり
5)ベクルリー薬価のみ請求、他注射薬剤は請求なし
6)施設看護師が実施のため算定なし
病院外でベクルリーを投与する際の薬剤師の役割
COVID-19が発生した場合の当薬剤科(薬剤師3.5人)のBCP(事業継続計画)は、陽性者と接することがないように薬剤科内の調剤とグリーンゾーンでの対応となっているので、陽性となった患者さんと直接会うことはありません。施設看護師に薬剤の調製方法の説明や投与前後のバイタルサインなどを記録するチェックシートを作成して渡し、看護師の観察と記録がスムーズに行えるようにしました。また、患者さんご本人に服薬説明を行うことはしていませんが、ご家族へは、ギリアド・サイエンシズ社が作成した冊子(『ベクルリーを投与される患者さん・そのご家族の方へ』)を施設のスタッフを通してお渡しし、治療薬についての情報を発信するようにしています。
COVID-19治療薬の選択の指標となる患者さんの情報を集めて医師へ報告するように心がけています。具体的には、患者さんが普段服用している薬剤が何かを把握し、COVID-19治療薬との相互作用、影響を与えるような薬剤がないかを確認します。経口投与が可能か、血管確保が可能か、患者さんに最適な投与経路も確認します。高齢者施設の場合、病院に比べて検査の回数が多くはないので検査値の最終日を確認しますし、必要があれば検査依頼も行います。また、どのような薬剤が必要になるかを知るために患者さんの病態を医師に適宜確認し、どの薬剤をどのくらい確保するか、必要な薬剤が過不足なく供給できるように準備することも念頭に置いています。
薬剤投与前後に腎機能・肝機能を中心に検査値を確認し、有効性と安全性の面からアプローチできるようにしています。特に投与前において、腎機能を確認する際に、高齢者では筋肉量が少ないために血清クレアチニン値が低い場合や、脱水を起こして血清クレアチニン値が高い場合があるので、それらを含めて患者さんの状態を確認するようにしています。また、投与時のインフュージョンリアクションやアナフィラキシーショックなど重大な副作用が起きていないか経時的に確認できるように、バイタルサインなどを記録できるチェックシートを作成し、看護師が観察しやすいようにしています。
おもと会グループ「とよみの杜」には、慢性期病院の大浜第二病院と特別養護老人ホーム【すみれ】、ケアハウス【ひまわり】、介護老人保健施設【はまゆう】があります。特別養護老人ホームとケアハウスの入居者は外来診療で薬剤も医療保険で算定します。介護老人保健施設は、抗がん剤等を除いて薬剤費を算定できませんでしたが、令和4年1月から、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院が、新型コロナウイルスに感染した入所者に抗ウイルス薬のベクルリーを投与した場合、診療報酬の薬剤費の算定が認められました。そのため、介護老人保健施設と連携して当院の訪問診療でベクルリーを処方し、調剤報酬の算定を行っています。
*算定要件などにつきましては各都道府県の審査支払機関にお問い合わせください。
施設全体における感染対策について
- 感染症が発生していない場合
- 年間教育計画を立て、定期研修会を企画しています。施設の管理者の要望に応じて適宜、臨時研修会を開催し、平時から施設内での感染対策を教育・評価しています。
- 会議(web会議)やラウンドで助言やアドバイスを行っています。
- 新型コロナウイルス感染症対策マニュアルを定期的に見直し、改訂点を全施設に周知するとともに、現在の感染状況を踏まえた上で、月に1回程度、ニュースと感染対策を掲載した月報を発行しています。
- 感染関連の事例の発生や懸案事項があると、各施設事業所の管理者から報告、連絡、相談があり、その事例や懸案事項を解決すべく迅速に対応しています。
- 感染症が発生した場合
- 新規症例に関する一報が入った時点で、感染状況を確認しICDに報告し、ICDと一緒に施設を訪問しています。陽性者の隔離と適切な防護具の選択と着脱、換気、接触者の確認など感染拡大防止に向けた対応を確認・指示し、可能な限り現場に向かい施設の担当者と一緒に対策を講じています。不十分な箇所はその場で指導を行い、リーダースタッフに継続指導を引き継いでいます。施設に出向いた際には、感染リスクの高い食事介助、シャワー浴、および歯磨きの実施方法を確認しています。また、職員の休憩室や食事スペース、更衣室などの環境を実際に見て、改善点を指導しています。
- 抗原キットの使用方法や検体採取の方法についても指導しています。
- 感染が終息した時点で、施設の担当者と振り返りを行い、必要に応じて職員一人一人と「今回困ったこと」、「今回できたこと、よかったこと」、「次回は個人でどうするか」、「チームでどうするか」などについて意見交換しています。
通常は、国内、県内の感染状況や季節性の感染症の発生防止のため定期的にラウンドし、施設感染対策の実施状況を確認しています。特に手指衛生とPPEの着脱などは定期的に指導するとともに、簡単なペーパーテストやPPE装着チェックにより、知識、および実技の定着を図っています。換気については風の流れを確認する方法を、適宜指導しています。
2021年4月におもと会統括本部に安全感染管理室が設置されました。構成メンバーは、室長(安全管理者、認定看護管理者)、感染管理認定看護師1名、事務職1名が配置されています。関連医療機関の副院長医師(ICD)に常に相談し指導を受けています。また、おもと会グループ特別顧問の藤田次郎先生(琉球大学名誉教授)と週1回のミーティングを実施しており、おもと会55施設・事業所(*急性期病院を除く)の感染状況の分析と対策に関する指導を得る機会があります。
介護老人保健施設における対応について
職員への感染対策、PPE着脱などの指導は施設内や法人内の研修会で行っています。平時より職員はN95マスク、フェイスシールド、手指消毒用アルコールを携帯して業務を行い、感染者発生時は、可能な限り個室移動しPPEを装着し対応しています。個室移動が不可の場合は、多床室でカーテン隔離を行い、部屋全体をレッドゾーンとして対応しています。
入所者との面会は原則リモートで行っていますが、入所者の状態悪化や看取りケア対応者のご家族の場合は、施設入口のパーティション越しで行い、居室へ面会者を誘導する場合は、時間・人数・距離を制限し、健康チェックシートの記入、標準予防策を指導しての面会を実施しています。
感染者と非感染者の分離を基本とし、職員の配置、使用する物品、エリア分けを行います。クラスター発生の場合は、BCP(事業継続計画)を発動し感染状況と職員数を考慮し、業務の中止または削減をして業務内容を絞り込み入所者のケアを行います。共有スペースの使用や入所者の交流も中止するため、入所者は居室内で過ごすことが多くなりADLの低下や精神面悪化が懸念されます。そのため、リハスタッフやデイケア職員等で居室内で可能なリハビリの実施、精神面などのケア対応を行います。
看護職員は感染者の状態観察を頻繁に行い、急変に対応できるようにします。医師へ状態報告を密に行い指示を受けますが、点滴などの処置の場合は、安全面を考慮し看護師2名体制で感染者の処置を行います。
治療方針の決定は、施設長(医師)が行います。看護師からリアルタイムで入所者の全身状態・バイタルサインの報告を受け、施設長は診察後、重症度を判断し、内服薬や点滴投与の指示を出して、その処置や対応を施設看護師が行います 。
ベクルリーの投与が必要と判断した場合には、法人併設の病院へ薬剤投与のための往診を依頼します。往診医がベクルリーの処方を行い、同院の薬剤科よりベクルリーが処方箋と一緒に当施設に届き、薬剤師と看護師で二重チェックを行います。その後の手技・手順でも何度もチェックが必要となるため、看護師2名で必ず行い、また投与に際しては、施設で使用しているベクルリーチェックシートを用い入所者の観察を行っています。