65歳以上
厚生労働省の『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第10.0版』において、高齢は最も重要なリスク因子であることが記載されています1)。
COVIREGI-JPにおける重症化リスクの検討では、高齢者における入院時の重症度のオッズ比は1.04 (95%信頼区間:1.03-1.04)と有意であり、酸素投与/人工呼吸/ECMOの使用率においては、20歳代で5.3%であったものが80歳以上では69.3%と上昇しました2) 。
酸素投与/人工呼吸/ECMOの使用率(20歳代/80歳以上)
2)Terada M et al. BMJ Open. 2021 Jun 15;11(6):e047007. doi: 10.1136/bmjopen-2020-047007.より作図
酸素投与や人工呼吸/ECMOの使用率は基礎疾患の有無にかかわらず、高齢者ほど高いことが示されました2)。
高齢COVID-19入院患者におけるコホート研究では、65〜74歳、75〜89歳、90歳以上に分類し、重症化リスク因子の検討が行われました。65歳以上の高齢者の死亡率は11.5%であり、65〜74歳では5.3%、75〜89歳では15.2%、90歳以上では22.4%でした3)。
COVID-19により入院した患者の転帰(年齢別)
3)Asai Y et al. Gerontology. 2022 Jan 7:1-11. doi: 10.1159/000521000. より作図
S. Karger AG, Basel
人工呼吸管理を行った重症患者1,555例の分析では、59歳以下と比較して、死亡オッズ比は60代で2.60(95%信頼区間:1.65-4.08) 、70代で6.92(95%信頼区間:4.23-11.31) 、80代で13.17(95%信頼区間:7.21-24.06) 、90代以上で92.63(95%信頼区間:16.66-514.98)でした4)。
人工呼吸管理を行った重症患者における死亡オッズ比(年齢別) n=1,555
4) Tanaka C et al. Ann Intensive Care. 2021 Dec 11;11(1):171. doi: 10.1186/s13613-021-00959-6.
このように高齢は酸素投与や呼吸管理のリスク因子であり、重大な死亡リスクであることから、高齢者の重症化予防は重要であると考えられます。
なお、65歳以上の患者さんにCOVID-19の治療を行う場合、基礎疾患や服用中の薬剤の有無を確認することが必要です。
高血圧、脂質異常症、糖尿病、不整脈・狭心症、腰痛症、不眠症の治療薬は高齢者での使用が想定されます。以下に、注意が必要な薬剤を示します5)。
CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)
注1 ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでも CYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
注2 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。
厚生労働省 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)
1)令和5年度厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業 一類感染症等の患者発生時に備えた臨床的対応に関する研究 新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き 第10.0版. 2023年8月21日発行
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00111.html (2023年8月22日閲覧)
2)Terada M et al. BMJ Open. 2021 Jun 15;11(6):e047007. doi: 10.1136/bmjopen-2020-047007.
3)Asai Y et al. Gerontology. 2022 Jan 7:1-11. doi: 10.1159/000521000.
4)Tanaka C et al. Ann Intensive Care. 2021 Dec 11;11(1):171. doi: 10.1186/s13613-021-00959-6.
5)厚生労働省 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)