妊娠
厚生労働省の『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第10.0版』では、妊娠後半期の感染により、早産率が高まり、患者本人も重症化しやすい可能性が指摘されています1)。
妊娠中及び最近妊娠した(すなわち出産後または中絶後)女性におけるシステマティックレビューでは、ICU入院、侵襲的人工呼吸、ECMO使用については妊娠中及び最近妊娠した女性の方が高いことが示されました(オッズ比:ICU入院2.61[95%信頼区間:1.84-3.71]、侵襲的人工呼吸2.41[95%信頼区間:2.13-2.71]、ECMO使用3.71[95%信頼区間:0.71-19.41])2)。(海外データ)
さらにCOVID-19を発症した妊婦では母体死亡、ICU入院、早産が増加し(オッズ比:母体死亡6.09[95%信頼区間:1.82-20.38]、ICU入院5.41[95%信頼区間:3.59-8.14]、早産1.57[95%信頼区間:1.36-1.81])、新生児のNICU入院も増加しました(オッズ比2.18[95%信頼区間:1.46-3.26])2)。(海外データ)
2)Allotey J et al. BMJ. 2020 Sep 1;370:m3320. doi: 10.1136/bmj.m3320.より抜粋
また、妊娠中のCOVID-19重症化リスク因子は35歳以上、BMI30以上、高血圧、妊娠糖尿病、子癇前症などでした(オッズ比:35歳以上1.56[95%信頼区間:1.19-2.04]、 BMI30以上1.84[95%信頼区間:1.46-2.31]、高血圧1.75[95%信頼区間:1.40-2.20]、糖尿病2.90[95%信頼区間:1.93-4.34]、子癇前症5.19[95%信頼区間:2.22-12.13]) 2)。(海外データ)
COVID-19と診断された妊娠中および最近妊娠した女性における重症化に関連するリスク因子
*:リスク因子を連続的に測定している1つ以上の研究を含む。
2)Allotey J et al. BMJ. 2020 Sep 1;370:m3320. doi: 10.1136/bmj.m3320.より作図
日本のCOVIREGI-JPにおいても、傾向スコアマッチングにより、生殖可能な非妊婦935例と妊婦187例の比較が行われました。酸素投与を必要とする中等症以上の患者の割合は非妊婦が4.9%であったのに対し、妊婦では9.6%と有意に高いことが明らかになりました(p=0.0155、フィッシャーの正確確率検定)3)。
また、中等症及び重症のリスク因子として妊娠中期以降(オッズ比5.295[95%信頼区間:1.215-23.069])と基礎疾患を有する妊婦(オッズ比3.871[95%信頼区間:1.201-12.477])が報告されており注意が必要です3)。
多変量ロジスティック回帰分析(妊婦のみ)
3)Shoji K et al. Clin Infect Dis. 2022 Jan 17:ciac028. doi: 10.1093/cid/ciac028.より作図
1)令和5年度厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業 一類感染症等の患者発生時に備えた臨床的対応に関する研究 新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き 第10.0版. 2023年8月21日発行
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00111.html (2023年8月22日閲覧)
2)Allotey J et al. BMJ. 2020 Sep 1;370:m3320. doi: 10.1136/bmj.m3320.
3)Shoji K et al. Clin Infect Dis. 2022 Jan 17:ciac028. doi: 10.1093/cid/ciac028.